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東京地方裁判所 昭和53年(特わ)1667号 判決 1978年10月20日

被告人

(一)本店所在地

東京都三鷹市下連雀八丁目三番一号

三立電子工業株式会社

(右代表者代表取締役 高橋一雄)

(二)本籍

愛媛県西条市氷見乙一、七九三番地

住居

東京都世田谷区成城三丁目七番七号

職業

会社役員

高橋一雄

大正一〇年一〇月七日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官五十嵐紀男出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告会社三立電子工業株式会社を罰金一、二〇〇万円に、被告人高橋一雄を懲役一〇月にそれぞれ処する。

被告人高橋一雄に対し、この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告会社三立電子工業株式会社は、東京都三鷹市下連雀八丁目三番一号に本店を置き、各種電気機械器具の設計、製作、販売等を目的とする資本金三、七五〇万円(昭和五一年九月一三日以前は二、五〇〇万円、同五〇年一二月二二日以前は一、五〇〇万円)の株式会社であり、被告人高橋一雄は、被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括していたものであるが、被告人高橋は、被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て、架空経費を計上して簿外預金を蓄積するなどの方法により所得を秘匿したうえ

第一  昭和四九年八月一日から同五〇年七月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が五六、〇六七、五二四円(別紙(一)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五〇年九月三〇日、東京都武蔵野市吉祥寺本町三丁目二七番一号所在の所轄武蔵野税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が四、六四〇、六六二円でこれに対する法人税額が一、一一二、九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額二一、三四八、〇〇〇円(税額の算定は別紙(三)税額計算書参照)と右申告税額との差額二〇、二三五、一〇〇円を免れ

第二  同五〇年八月一日から同五一年七月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一〇〇、一一一、五三一円(別紙(二)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五一年九月三〇日、前記武蔵野税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が八、三八六、五八五円でこれに対する法人税額が二、三九九、九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額三九、〇八九、九〇〇円(税額の算定は別紙(三)税額計算書参照)と右申告税額との差額三六、六九〇、〇〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示冒頭の事実及び全般にわたり

一、被告人の当公判廷における供述

一、被告人の検察官に対する各供述調書(二通)

一、東京法務局登記官作成の被告会社各登記簿謄本(二通)

判示第一、第二の各事実添付の別紙(一)、(二)の修正損益計算書に掲げる各勘定科目別当期増減金額欄記載の数額につき(甲番号は検察官請求番号を示す)

<修繕工事高につき>

一、収税官吏中島進作成の売上及び売掛金調査書(甲3)

<外注加工費につき>

一、収税官吏森圭吉作成の架空経費調査書(甲4)

一、同じく経費認容調査書(甲5)

一、同じく経費(東芝分)調査書(甲6)

一、検察事務官伊東国雄作成の昭和五三年七月三日付報告書(甲7)

<材料費、仕入につき>

一、収税官吏森圭吉作成の架空経費調査書(甲4)

一、同じく経費(東芝分)調査書(甲6)

<期首、期末各棚卸高につき>

一、収税官吏森圭吉作成の棚卸調査書(甲8)

<現場経費につき>

一、収税官吏森圭吉作成の架空経費調査書(甲4)

<給料につき>

一、収税官吏森圭吉作成の架空経費調査書(甲4)

一、同じく架空給与調査書(甲9)

<法定福利費につき>(昭和五〇年七月期のみ)

一、収税官吏森圭吉作成の架空給与調査書(甲9)

<厚生費・事務所費・事務費・水道光熱費・通信費・修繕費・旅費・交通費・日当・宿泊・交際費につき>

一、収税官吏森圭吉作成の架空経費調査書(甲4)

<通行料につき>(昭和五〇年七月期のみ)

一、収税官吏森圭吉作成の架空経費調査書(甲4)

一、検察事務官佐野周二作成の昭和五三年九月四日付報告書(甲21)

<手数料につき>

一、収税官吏森圭吉作成の架空経費調査書(甲4)

一、同じく手数料調査書(甲11)

一、検察事務官佐野周二作成の昭和五三年九月四日付報告書(甲12)

<減価償却費につき>

一、収税官吏森圭吉作成の架空経費調査書(甲4)

一、収税官吏若林英徳作成の減価償却調査書(甲13)

<受取利息につき>

一、収税官吏若林英徳作成の預金等調査書(甲14)

<公租公課につき>

一、収税官吏森圭吉作成の架空経費調査書(甲4)

一、収税官吏若林英徳作成の源泉所得税および未払金調査書(甲10)

<支払利息につき>

一、収税官吏森圭吉作成の架空経費調査書(甲4)

一、収税官吏若林英徳作成の支払利息調査書(甲17)

<雑費・家賃・運送賃につき>(家賃・運送賃は昭和五一年七月期のみ)

一、収税官吏森圭吉作成の架空経費調査書(甲4)

一、収税官吏若林英徳作成の廃棄損等調査書(甲18)

<廃棄損につき>

一、収税官吏若林英徳作成の廃棄損等調査書(甲18)

<臨時工賃につき>(昭和五一年七月期のみ)

一、収税官吏森圭吉作成の架空経費調査書(甲4)

<損金算入法人税・損金算入市町村民税・損金算入加算税等につき>(いずれも昭和五〇年七月期のみ)

一、検察事務官佐野周二作成の昭和五三年九月四日付報告書(甲19)

<事業税認定損につき>

一、検察事務官伊東国雄作成の昭和五三年七月七日付報告書(甲20)

別紙(一)、(二)修正損益計算書に掲げた公表金額及び過少申告の事実について

一、押収してある被告会社の昭和五〇年七月期分、昭和五一年七月期分法人税確定申告書各一袋(当庁昭和五三年押第一四九五号符一、二)

(いわゆる認定役員貸付利息・認定役員報酬勘定に対する当裁判所の判断)

検察官は代表者高橋一雄に対する貸付金(代表者勘定)に係る認定受取利息として昭和五〇年七月期につき二、二一七、七三五円を、昭和五一年七月期につき三、三〇一、五四一円をそれぞれ所得を逋脱したものとなし、また、同一金額につき同期における各認定役員報酬として損金に各算入する旨主張する。

しかし、被告人の当公判廷における供述によれば、右貸付金の存在は認められない。それは単に被告人において、被告会社の簿外資産を自己のために流用し費消した後、本件査察による脱税の発覚後、国税局係官の指示に基づく事後の処理に過ぎない。

従って、右を前提とする同額の役員報酬の存在も認めることはできないといわねばならない。

なお、この点については、既に当裁判所昭和五二年一一月二八日判決(昭和五二年特(わ)第一七五七号法人税法違反被告事件)において説示したとおりである。

よって、昭和五〇年七月期につき、認定役員貸付利息及び認定役員報酬各二、二一七、七三五円、昭和五一年七月期につき、同じく各三、三〇一、五四一円については、いずれもこれを認めないこととした。

(法令の適用)

被告会社につき

いずれも法人税法一五九条、一六四条一項。刑法四五条前段、四八条二項。

被告人につき

いずれも法人税法一五九条(いずれも懲役刑選択)。刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の重い判示第二の罪の刑に加重)。同法二五条一項。

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 松澤智)

別紙(一) 修正損益計算書

三立電子工業株式会社

自 昭和49年8月1日

至 昭和50年7月31日

<省略>

<省略>

別紙(二) 修正損益計算書

三立電子工業株式会社

自 昭和50年8月1日

至 昭和51年7月31日

<省略>

<省略>

別紙(三) ほ脱税額計算書

三立電子工業株式会社

(1) 自昭和49年8月1日

至昭和50年7月31日

<省略>

(2) 自昭和50年8月1日

至昭和51年7月31日

<省略>

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